泥濘に溶かす者
「ふふっ、もうイきそうだねぇ?」
目の前で夢魔が微笑んでいる。
「キミの唇、甘くてあっつくなってるよ。」
赤い夢魔が微笑んでいる。
「イくときは、私に見つめられながらイくのよぉ?」
耳が蕩けそうになる心地良い声。事実、溶かされていた。抵抗しようという気持ちが。
「それじゃ、イっちゃっていいよ〜。」
彼女の、メローナと名乗る夢魔の許し。
「イっちゃったねぇ。でも、まだまだこんなものじゃないんだから。いっぱい楽しんでねぇ?」
いたわるようなキス。唇だけでなく、頬に瞼に、顔のいたるところに振りまかれるキス。彼女の唇が触れたところにはじくじくとした疼きが残る。もっと触れて欲しいと願ってしまう。触れられると、自分が溶けていくのが分かる。それでも、触れて欲しいと願ってしまう。
「ふふっ、キス、好きなんだ?甘えん坊さんだねぇ〜。」
笑みをこぼしつつ、楽しそうについばんでくる彼女。心をほぐすくすぐったさと熱っぽさ。そのピンクローズの唇にかかれば、キスが嫌いな者さえキス好きにさせられてしまいそう。綺麗な顔も、鮮やかな髪も、瞳も、豊かな胸もお尻も、それなのにきゅっとくびれた腰も、それぞれ魅力的。そんな彼女が迫ってくるだけでも上せてしまうのに、その唇と舌の柔らかさと熱さが、一層の高みへと引き上げてしまう。
「もっとキスしてあげる。いやだっていっても聞いてあげないんだから。」
飽きることなく口づけを振りまくメローナ。きっと、彼女自身もキスが好きなんだろう。あるいは、キスした相手が蕩ける様が好きなのか。こちらの唇も舌も、もう動かせない。彼女の意図するままくちゅくちゅとかき回される。それが、とても心地良い。
「今度はぁ、もっといろんなところにしてあげよっか。キミのカラダ中、キスが大好きな子にしてあげるねぇ。」
頬を離れ、耳元に寄せられる唇。触れた瞬間に鳴る水音。何度も何度も響く。ゾクゾクし過ぎて、思わず目をつぶるくらいに。
「はむっ……、んん……。」
唇が耳殻を挟み込む。濡れた唇はそのままはむはむとうごめき、時折熱い吐息が耳をくすぐる。その後は舌を広く使ってぴちゃぴちゃと唾液を塗り広げ、仕上げにキスで拭ってくる。
「反対のお耳もぉ……。」
表情に薄紅を浮かべた彼女。目の前を通り過ぎ、もう一方の耳へと向かう。そして、さっきの行為をリピート。自然と声が漏れる。身体がぶるぶると揺れる。彼女の唇が触れる度にゾクゾクと寒くなる。そして、ほどなく熱くなる。
「今度はぁ、首のあたりかなぁ?ふふっ、汗で濡れちゃってるね。」
アタシが拭いてあげる、と唇を寄せてくる。ちゅうちゅうと音を立てて汗の滴が吸われていく。足の指を自然と折り曲げてしまうほど心地よい。首筋に沿って、上から下へ、下から上へ。今度は舌も使ってぺちゃぺちゃ。
「次はぁ……、そうだっ、腕にもいっぱいキスしてあげる。」
こちらの指にそのしなやかな指をそっと絡めてくる。反対の手で肘を優しく持ち、腕の付け根にふわりと唇を乗せる。耳にそうしたように唇で食んでくる。筋肉にはあっさり押し返されるものの、脂肪は彼女の唇に吸われ形を変える。唇のやわらかさだけでなく弾力も理解できたような気がして、心臓の音が少しばかり高くなった。
「んふっ、二の腕とか……、ひじとか……、どうかなぁ?」
舌が腕を這い回り、唇がスキップを繰り返す。彼女の手が腕を持ち直す動きも心地よい。力はすっかり失われ、まるで溶けてしまったかのよう。指に絡む彼女の指がなければ、本当に消えてしまうのかもしれない。
「指もぉ……、はむっ……。」
火照った身体の末端。ほかとくらべてほんのわずかばかり冷たい場所。だから、彼女のキスの熱さがよく分かる。そして、何かに触れるための場所だから、彼女の舌のぬめりもよく分かる。
「んんぅ……、ちゅぅっ、ん……。」
ぺちゃぴちゃと響く水音。くぐもった声が耳をくすぐり、あたたかい息が指の根本をくすぐる。泥濘に深く沈み込むような心地よさと、氷で背中をなぞられる寒気とが同居していて、クラクラと揺らめく感覚が全身を包む。こういう感覚のことを夢心地、といえばいいのだろうか。
「ふふっ、夢みたいでしょぉ?」
彼女がこちらの気持ちを見透かしたようにな台詞を吐く。その動揺が伝わったのだろうか、彼女はさらに言葉を紡ぐ。
ああ、そういえばこれは夢だっけ。それじゃ、彼女も夢?目が覚めたら消えてしまう?どこかへ去ってしまう?胸に去来するのは、不安。
「あ〜、なんか余計なこと考えてる。」
口をとがらせる彼女。柳眉がわずかに寄せられ、怒ったような顔になる。彼女のそんな表情に胸が締め付けられるような思いを抱いてしまう。そんな顔は見たくないと願ってしまう。
「もうっ、そんな顔しないの。集中集中。」
彼女の顔がふっと緩み、あきれたような言葉とともに額に深く唇をつけてくる。口づけを受けているところから伝わるほんのりとしたぬくもり。じわりじわりと顔中に広がっていき、深いため息とともに顔の険を取り除いていく。
「そうそう。こういうことするときは、そういうトロンとした顔が一番だよ?」
よしよしと頭を撫でてくる。首のあたりからぞわぞわとした心地よさが湧いてきて、広がっていくに連れてその部分がふにゃりとほどけて行くのが分かる。彼女のやることなすことすべてが、まるで魔法のように抗しがたい魅力を持っている。それに飲み込まれていく。
「いい子なキミへのご褒美にぃ、いーっぱい可愛がってあげるからねぇ。」
こちらの反応に気をよくしたメローナ。花が咲いたような艶やかな笑顔がまぶしいくらい。その笑みの華やかさと優しい声音に、心までもがとろとろに溶かされていってしまう。
「キミの全身、汗でびっしょりだけど、今のでちょっと冷えちゃったよね?だから、またあっためてあげるから、ね?」
また?彼女の唇と舌で?
「そうだよぉ?今度はこのピ〜ンと尖った乳首もぉ、おなかもぉ。い〜っぱい可愛がってあげるんだから。」
のしかかっている彼女が、その全身に珠の汗を浮かべながら見下ろしてくる。明かりを背負った表情からはぞっとするほどの色気が漂い、朗らかで愛らしい彼女の姿に息を飲むほどの迫力を与えている。
「期待しちゃった?ふふっ、なら、それに応えてあげないと、ね。」
薄っすらと目を細めた彼女の顔が、胸元へと近づいていく。そのゆっくりとした動きのせいで、嫌が応にも期待が膨らんでしまう。彼女の舌がちろりと自分の唇を濡らしたその次の瞬間に、彼女の唇がぴちゃりと乳首に張り付く。一瞬、呼吸が止まった。全身にきゅっと力がこもる。しかし、ぞくぞくとした快感が広がるに連れ、こわばりは解きほぐされていく。氷が水に変わるように、ベッドへと広がっていく体。深く、深く沈み込んでいく。
十分に浸りきった後、次を期待するのを見透かしたように、彼女の唇が胸元をついばみ始める。彼女の両手は体のどこにも触れない。ただ、唇だけが体に触れている。ほんの二切れの果実。その柔らかさと瑞々しさから加えられる愛撫が、全身を支配する。
「切なそうな顔、とってもかわいいっ。もっと可愛くなってちょうだいねぇ?」
楽しそうに細められた視線が外れ、唇は彼女の体とともに下へと降りていく。あばらに浮いた汗を吸い取り、その下の肌にも優しく吸い付き、彼女の唾液に塗り変えていく。塗り付けた唾液を拭うように、ハーモニカでも吹くように体の表面を滑る唇。
腹筋の上にうっすらと乗った脂肪を唇で挟み、その先にある筋肉の繊維を一筋一筋ほぐすように、何かを探るように、一点一点丁寧についばむ唇。
穏やかな快感やくすぐったさの中に、時折混じる強い快感。不随意にはねる体。自分自身も知らなかったウィークポイントが、彼女の唇によって暴かれていく。それは、とても心地良くて、このまま全部委ねてしまいたくなる魅力があった。
「うっとりしちゃって……。いいんだよ、ふにゃふにゃに蕩けちゃお?」
彼女の唇が離れ、寂しさに疼く。そこを指先がすっと撫でていく。ぽやんとした語り口とふわりと柔らかい身体のあたたかさ、そして、小さなサインも見逃さない魔性の手捌き。それもまた細やかな気配りと取れるほど溶かされつつある身体と心。はしたない声が独りでに漏れるが、それはどこか別世界へと放たれているかのように実感がわかない。それほどの浮遊感、夢の中での夢心地。
彼女の唇は腰のくびれにそって太股へと至る。ピンと張りのある外側に舌で唾液を塗り付けては、唇でついばんで行く。湿り気を帯びた肌は彼女の唇に吸いつき、離れていかないでとねだっている。その一方で、まだ彼女が触れていない部分は、早く触って欲しいとせがんでいる。自分の体なのに、すぐそばにある場所同士なのに、まるで喧嘩でもしているかのようだ。彼女を求めている、という願いは同じだというのに。
彼女の腕と乳房が右足の膝下を抱き包む。そして、太股に加えられていた愛撫は内股へと移っていく。しっとりと汗を浮かべたその場所は彼女の唇と難なくと溶け合い、それまでの優しい快感とは幾分性質が異なる性感が下腹部を襲う。無意識のうちに丸まろうとする体。しかし、右足だけは、彼女の腕と乳房に縛めを受けた足だけはそれができなかった。
「んっふ、ふ……。んっ、ちゅっ……。」
愛撫を続けたまま、くぐもった、楽しそうな笑い声を漏らすメローナ。ぴちゃぴちゃ、ぺちゃぺちゃとわざとらしいほどの水音を鳴らしながらキスを振りまいている。蕩けて歪む意識にもその音ははっきりと聞き取れ、じくじくとした疼きを心に焼き付けていく。唇を火種に、水音を薪として、快楽は煌々とした炎となっていく。
丸めていた体は、やがて疲労と快感によってほぐされていく。シーツを引き込み、波を打たせていた左足がゆっくりと延びていく。シーツを掴んで身をよじっていた上半身も、熱い息とはしたない声とともに、シーツの海に広がっていく。後に残ったのは火照りを数段高められた体。弾んでいる息が、朱に染まった体が、片目から一筋の涙さえこぼれ落ちた表情が、味わっている快感の深さを雄弁に表していた。
「ふふっ、すっごくエッチな顔してるよぉ。鏡で見せてあげたくなっちゃうくらい。」
愛撫の手を休め、こちらの顔を下から見上げてくるメローナ。彼女の瞳もまた熱く潤み、その笑顔は花の香りというよりも熟れた果実のように甘くなっていた。その表情自体が胸を熱くさせるのに、自分の体を求める中でそうなったという事実にも、たまらなく嬉しくなってしまう。
「……でもぉ、もっと続けちゃうよ?もっともっと、キミをエッチな子にしてあげる。」
そういって、その体をこちらの両足の間に滑り込ませ、両手をこちらの腰からおなかへと回す。そして、軽いかけ声とともに強い力で腰から下を上に持ち上げてきた。脱力していた体は為すすべもなくその行動を許してしまう。彼女がその両肩にこちらの膝裏をかけていて、また、しっかりと抱きしめてくれているため、痺れたままの体でもそれほど辛くはない姿勢なものの、彼女の眼前に恥ずかしい部分を晒されていることと、その部分越しに彼女を見上げているということに、恍惚の中に置き忘れてきた羞恥心がぶり返してしまう。
「あれぇっ、顔、もっと赤くなっちゃったよ?もう色々しちゃったのに、まだ恥ずかしいんだ?」
可愛い、と言葉を続けて、彼女は舌を突き出して見せた。真っ赤な舌の先に光る雫が浮かんでいる。そこから一筋の糸がこちらの胸元に向かって垂れ落ちて来て、両の乳首の間に落ちた。その雫は汗と混じりあって首元を通り、シーツに吸い込まれていった。描いた軌跡に沿って走る熱い感覚。と同時に、口中に覚える寂しさ。できるなら、胸ではなくて、唇に、舌に落として欲しかった。口づけができないなら、せめて。そんな願いを抱いてしまう。
「ふふっ……。」
彼女がよりいっそう体を押しつけてくる。より深く体が降り曲げられ、窮屈な姿勢を支えようと両手がシーツを掴む。顔の真上に、彼女の顔。彼女の唇の真下に、こちらの唇。再び露わになる真っ赤な舌。そこから再び、そして、先ほどよりもねっとりと絡み合った唾液が垂れ落ちる。願ってしまったその甘露を、彼女がそうしていたように舌を伸ばして受け入れる。自然と両目が閉じ合わさり、口の中に広がる、喉に絡む唾液の存在をより強く感じ取ろうとする。
「……どう?おいしい?」
上から振ってくる言葉。耳から入って全身をぶるりと震わせる声に、こくりとうなずく。
「もうっ、あんまりキミが物欲しそうにしてるから、ついサービスしたくなっちゃった。」
軽く口をとがらせて、それでいて嬉しそうに紡ぐ言葉に、かぁっと顔が熱くなる。して欲しいとは思っていても、口に出すのは恥ずかしくてできなかったのに。体はそんな葛藤とは無関係にねだってしまっていたらしい。けれど、彼女が、メローナがそれを見逃さなかったことが、そして、叶えてくれたことが、どうしようもなく嬉しいと思ってしまう。膨れ上がっていく感情は全身に広がり燃え上がっていく。それでも余る感情は声と涙となってこぼれ出し、彼女を求めていく。
「やぁんっ、そんなにメロメロになっちゃうなんて、アタシもたまらなくなっちゃうっ。」
触れ合っているメローナの体がぶるぶると震えている。目を細めてこちらを見下ろす瞳と、紡ぎ出す言葉も、見ているだけで、聞いているだけで蕩けるような響きに濃く深く包まれている。
「いいよぉ、そんなに可愛くなってくれたご褒美あげちゃうっ。」
彼女の両手がこちらの胸をぎゅぅっと掴む。普段なら痛いと思ってしまうような刺激も、今では目が眩むほどの快感。彼女の唇が、髪の毛一本も触れないままトロトロにされたそこにしゃぶりつく。彼女がこちらをイかせる意志を持った今、ふわふわとした柔らかさばかりを味合わされてきた唇は吸盤のような吸い付きを見せ、蕩けるようなしなやかさを見せて来た舌は、今は鞭のような張りをもって擦り上げて来る。全身に染み込んでいた快感が、胸を掴む手、乳首をねじる指、そして、唇と舌の愛撫によって、その恍惚を幾重にも深めながら一つの焦点を形作っていく。
「ほらっ、いいんだよっ?キミの最高に可愛いところ、アタシに見せてぇ。」
口を離しそう言い放った束の間、再度口を付けて盛大な水音を響かせて吸い上げて来る。浴びせかけられた言葉と、耳から心に響く自分と彼女の体液のカクテルに導かれ、自分でも聞いたことのないほどのあえぎ声とともに、彼女の口の中へ、喉へ、体内へと、自身の体の内から溢れるものを注ぎ込んだ。
桃色に染められた意識。あたたかな濁流に飲み込まれ、自分が叫んでしまっていることも忘れ、全身に走る恍惚に浸り切らされる。頭も胸も腕も指も、等しく感じ合っていた。
彼女はそこに口づけたまま、流し込まれるすべてを余さず飲み下していた。指の痕が着いた胸を手のひらでやわやわと包み、腫れ上がった乳頭に汗と唾液のローションを塗り込んでいる。それらの愛撫の一つ一つを感じ取ることはできなかったが、その愛撫が快感に悶える身体を一層悶えさせるとともに、まだ感じていたいと願う心を労ってくれているのは、不思議と理解できていた。
深く長く心を包み込んだ荒波は、ゆっくりと凪へ姿を変えていく。ゆらゆらと船の上で揺れているかのような心地。時間の流れさえいつもよりゆったりと流れているんじゃないだろうか。無理矢理言葉にすればこのような表現になる恍惚に包まれ、幸せな感覚に身も心も浸らせる。
やがて、徐々に五感が外界の情報を認め始め、全身から引き始めた波も輪郭を形作っていく。その波は自分の腕を通り抜け、指に絡み着いて実体を結んだ。
目を開くと、メローナが覆いかぶさっているのが分かった。いつの頃からか、両手の指をこちらの両手の指にそっと絡ませ、ふわふわの乳房を押し付け、潤んだ瞳で見下ろしてくれていた。こちらが目を覚ましたからか、指に絡めていた指を離し、しなやかな両腕でそっと頭を抱きしめて来る。うっとりとした微笑みを表情に湛えつつ、その唇をこちらの額や頬、耳、首筋と、顔中至る所への口づけを振りまいてくる。始めの内はくすぐったさに顔を反らそうとしてしまうが、その行動は彼女に抱き包まれているために叶うことはなかった。むしろ、逃がしてくれなかったのがかえって嬉しくもあった。
「んんっ、ちゅっ、ふふっ、ん〜……。」
彼女の楽しそうな笑い声を聞きながらされるキス。汗の滴を舐めているのか、時折感じる熱い舌の感触も心地良い。
そうやって顔中を堪能していた彼女の唇が、ようやくこちらの唇へとたどり着く。そのまま重なるかと思った瞬間、彼女は動きを止め、じっと見つめてきた。ルビーレッドの瞳は、熱を帯びてしっとりとした輝きを放っている。前髪がふれあうほどの距離にある美貌にあたたかな笑みを浮かべ、その笑みはさらに深まって一層の華やかさを添える。ただ端正な造作だけではない、人懐っこい人柄を思わせてあまりある魅力的な笑顔。
彼女にすっかり溶かされた心が、両腕を操って彼女の背中に回す。こちらのその動きに気づいていなかったのか、背中に触れた瞬間、少し驚いた表情を浮かべたメローナだったが、ほどなく元の笑顔に戻り、そして、さらに嬉しさを加えた笑みになってくれて、心の内に幸せな感情が沸き上がってくる。
「……まだ、終わりじゃないよね?」
ぽそりとささやいてくる。鼻先をくすぐるあたたかな吐息とともに。
その問いに、言葉ではなく行動で答える。背中に回した腕にほんの少し力を込め、顔を少しばかり上へと傾け、彼女の唇を受け入れた心をさらけ出す。
彼女の瞳が閉じる。それを見て、瞳を閉じる。ほどなく重ねられる唇。心を以て心を伝えあった口づけのあたたかさに、心の輪郭がとろりと溶けだしたのがわかる。もっと溶かしたいと、そして、彼女と溶け合いたいという願いとともに、唇をなぞる彼女の舌を吸い上げた。
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